医薬品卸売事業

社会インフラとしての高い流通品質による医薬品の安定供給を実現するとともに、「医療流通プラットフォーム」の構築により、流通在庫の適正化を図り、社会的コストの低減に貢献しています。

機会とリスク

機会

  • スペシャリティ医薬品の市場拡大
  • 後発医薬品の使用拡大
  • 医療・介護分野におけるデジタル技術の普及
  • 地域医療連携・地域包括ケアシステムの推進
  • アジアにおける医療制度改革

リスク

  • 国民医療費の増大抑制による市場成長の停滞
  • 医薬品流通、販売活動の変化(ガイドラインへの対応・遵守)
  • 流通在庫管理の高度化
  • 異業種の参入による競争激化
  • 自然災害、パンデミックの発生

スズケングループの強み

安心・安全かつ安定的な医薬品流通体制

  • 地域密着の全国展開
  • スペシャリティ医薬品のトレーサビリティシステム「キュービックス」の展開
  • グローバル基準に準拠した高い流通品質

顧客との強固な関係

  • 「スマイル活動」による顧客との信頼関係
  • 医療機関、保険薬局、医療従事者とのネットワーク
  • 安定した医療用医薬品の売上高とシェア
    • 医療用医薬品の売上高:1兆9,779億円(2022年度)
    • 国内シェア:22.29%(2022年度)

医薬品卸売事業における拠点・車両台数(2023年3月31日現在)

  • 営業拠点:209拠点
  • 卸物流センター:15カ所
  • 運送事業用車両:1,893台

主な取り組み

医薬品卸売事業

安心・安全かつ安定的な医薬品流通

スズケングループは国内外約1,000社の医薬品メーカー・医療機器メーカー等から医療用医薬品・診断薬、医療機器・医療材料、医療食品を仕入れ、全国の医療機関および保険薬局に供給しています。

医薬品が患者さまに届くまでの流れ
医薬品メーカー、診断薬メーカー、医療機器・材料メーカーから医薬品卸へ 医薬品卸から病院、診療所、薬局へ 病院、診療所、薬局から患者さまへ
全国に展開する医薬品卸売のグループ会社
スズケングループ会社 岩手県:株式会社スズケン岩手、栃木県:ナカノ薬品株式会社、中国地方:株式会社サンキ、四国地方:株式会社アスティス、九州地方:株式会社翔薬、沖縄県:株式会社スズケン沖縄薬品 株式会社スズケン 前述以外のエリアに支店あり

必要な時に、必要な量の医薬品を確実に供給

厳格な品質管理のもと、医薬品を全国くまなく、必要な時に、必要な量を、確実にお届けするネットワークを構築しています。また、全国対応のトレーサビリティ・システムによって、ロット番号と有効期限を一元管理し、すべての医薬品の流通経路を明確化。医薬品回収の発生時には、速やかな対応が可能です。

トータルトレーサビリティシステム
各医薬品メーカー→[入荷管理]→スズケングループ[ロット番号・有効期限をバーコード管理(どのメーカーのどの工場で生産されたものか? どの医療機関へ出荷されたか?)→検索・照会]→[出荷管理]→各医療機関・調剤薬局

非常時にもお役に立てる安定供給体制

スズケングループは、全国をカバーする物流センターをはじめとする物流拠点に豊富な在庫を有し、欠品のない物流体制を整えています。地震などの大規模災害やパンデミックといった非常時に備えて、日頃から安定供給体制の整備に取り組んでいます。

札幌物流第一センター 宮城物流センター 千葉物流センター 戸田物流センター 神奈川物流センター 新居浜物流センター 名南物流センター 江南物流センター 阪神物流センター 岡山物流センター 福岡物流センター(SILC) 西神物流センター
物流センターの自家発電機
物流センターの免震装置

医療流通プラットフォームの進化

日本一のメディカル・ロジスティクスパートナーを目指して ~Only One 医療流通プラットフォーム~

スズケングループは医薬品メーカーから医薬品卸までの物流を担う「メーカー物流」と、医薬品卸から医療機関・保険薬局までの物流を担う「卸物流」の2つの機能を強化してきました。さらに、厳格な温度管理が求められる治験薬物流や希少疾病用医薬品流通も含め、高品質で幅広い機能を備えた業界無二の医療流通プラットフォームを構築しています。医薬品メーカーのサプライチェーンにおけるアウトソーシングニーズに応えるだけでなく、物流の共同化により、配送の効率化や流通在庫の適正化を図り、社会的コストの低減にも貢献しています。

2012年には医薬品卸として初めて希少疾病領域の総合支援事業を開始。医療流通プラットフォームを活用し、既存の流通システムでは対応できなかったニーズにも柔軟に対応することで、希少疾病薬の安定供給を実現しています。

業界に先駆けてメーカー物流受託を開始しています。品質面では、現在、メーカー物流センターを11カ所、輸配送ターミナルを6カ所有し、このうち9つの物流センターにおいて、2008年からGMP※1に準拠した「ISO9001」の認証を取得しています。その後「2015年版」を取得したことでグローバル基準となるPIC/S※2GDP※3に準拠し、新たな運用基準となる「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」にも対応するなど、品質管理の強化に努めてきました。

これらの強みが評価され、メーカー物流、スペシャリティ医薬品流通のさらなる受託増加につながっています。また、2024年稼働予定の業界初の複合型センター「首都圏物流センター」では、ロボット技術による自動化・省人化や、非接触による納品、検品業務の省略化など、新たなニーズや環境変化に対応した高品質かつ効率的な流通を目指します。

  • ※1
    GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造における製造管理と品質管理基準
  • ※2
    PIC/S(医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム):各国政府や査察機関の間のGMPとGDPにおける二つの協力機関の統合呼称
  • ※3
    GDP(Good Distribution Practice):医薬品の輸配送・保管過程における品質管理基準
メーカー物流:医薬品メーカーの工場・物流センター→ 卸物流:卸の物流センター・支店→医療機関の保険薬局→患者さま
首都圏物流センター 外観

製品カテゴリーの変化に対応した新たな流通モデル

スペシャリティ医薬品流通

2017年から、スペシャリティ医薬品のトレーサビリティシステム「キュービックスシステム」を展開しています。ICタグを通じてデータを読み書きするRFIDとIoT技術搭載の専用保管庫を使用し、医薬品の輸送から院内保管、戻り品の返却、再納品に至るまで、24時間365日、リアルタイムで医薬品の管理状態を遠隔モニタリングすることができます。これにより、再販売の可否判断や在庫状況の把握が可能となり、医薬品廃棄ロスの削減や在庫偏在の防止に貢献しています。また、自動発注や不動品・未使用在庫の入れ替え提案などを自動化でき、医療機関の業務負荷軽減にもつながっています。キュービックスシステムは、2023年3月末時点で全国375施設に導入いただいています。今後3年間で、がん拠点病院を中心に600施設以上への導入拡大を目指しています。

後発医薬品流通

2019年4月に設立した東邦ホールディングス株式会社との合弁会社である株式会社TSファーマにて、患者視点で安全、安価で高品質な後発医薬品の安定供給に向けた企画・交渉を行っています。新たな流通モデルの展開と同時に、協業する製薬企業との共同生産体制の整備や共同調達、ならびにメーカー物流を含むサプライチェーンの効率化を図っています。

地域医療連携・地域包括ケアシステムへの対応

当社グループの保険薬局や介護事業、ITヘルスケア企業との連携により、地域の医療・介護に関わる人々をつなぎ、課題解決に取り組んでいます。これまでに多くの地方自治体と支店・営業部・会社単位で連携協定を締結し、地域社会への貢献を進めています。

愛知県大府市との連携協定締結式

ヘルスケア流通改革

リアルとデジタルを組み合わせ顧客接点を拡大

従来の医薬品卸は、受注から納品、返品にあたって、常に営業担当であるMSの判断・確認が必要な、MSに依存した体制となっていました。健康創造事業体への転換に伴いMSの重要性が増すことを踏まえ、ヘルスケア流通改革を行い、効果的・効率的な営業体制を構築することで「医薬品卸」から「ヘルスケア流通」への転換を図ります。具体的には、MSの間接業務を代行するサポート体制の構築とコラボポータルのサービスを活用した「営業サポート機能」、在庫情報や納品予定を見える化したアプリの活用およびカスタマーセンターの構築による「カスタマー機能」、グループ会社である株式会社エス・ディ・ロジとの連携による「ロジスティクス機能」の3つのバックヤード機能を強化します。これにより、MSが本来の役割である、スズケングループとお得意さまをつなぎ、健康創造の輪を広げ、収益を生み出すことに集中できる環境を整えます。

営業活動については、訪問を軸とした対面営業でお得意さまとの信頼関係を構築するというこれまでの手法を大切にしながらも、コラボポータルの活用による情報提供やソリューション提案といったデジタル接点も拡大させていきます。訪問量を維持しながら、効率も重視して顧客接点量の最大化を図ります。

デジタルの活用による顧客接点の拡大

協業による主なソリューション

新たな営業体制の構築

営業活動へのデジタルとバックヤード機能の導入によって、今後は、社会インフラの医療流通基盤としての「守り抜く営業」と、新たな価値を提供する「新しい営業」の2つの営業体制を構築します。「守り抜く営業」では、これまでに培ってきたお得意さまとの信頼関係や当社グループの機動力を生かし、最前線で顧客と地域の課題解決を支援すると同時に、コラボポータルの普及によって当社グループと顧客、地域をつなぐコーディネーターとしての役割を担います。「新しい営業」では、医療・介護・地域のキーマンに対して、コラボポータルに搭載されるデジタルヘルスサービスを活用したソリューションを提案します。将来的には、医療・介護従事者の皆さまだけでなく地域社会にも貢献する新たな価値の提供を目指します。

アジア事業

中国・韓国における医薬品流通事業の展開

中国における医療プラットフォームの構築

アジアでは、人口増加や経済成長に伴い各国政府の医療制度改革が推進されています。医薬品流通の高度化・効率化も急がれており、当社グループには日本で培った経験、知見に大きな期待が寄せられています。

中でも中国は、所得水準の向上や医療保険制度の整備などを受けて、現在世界第2位の医薬品市場となっています。

当社は2008年に中国の大手医薬品卸である上薬控股有限公司との合弁会社「上海鈴謙滬中医薬有限公司(現:上薬鈴謙滬中(上海)医薬有限公司)」(当社持株比率49.9%)を設立し、上海と青島で医薬品流通事業を展開しています。

さらに2016年9月には、EPSグループのEPS益新株式会社※6に35%出資し、資本業務提携を行いました。両社で事業展開する「鈴謙(深圳)医薬有限公司」(当社持株比率20.0%)では、主に、日系製薬企業の製品の中国市場への導入支援や、中国全土における学術販促活動の受託を行っています。

これまでの事業活動の結果、当社はパートナー企業と共に、保有する研究・開発・治験・製造・販売・販促・流通・回収の機能を活用して、お客さまが必要とするサービスをワンストップで提供できる「医薬品流通プラットフォーム」を実現しています。今後も中国のヘルスケア領域における新たな付加価値の創出を目指していきます。

上薬鈴謙滬中(上海)医薬有限公司の優秀社員を毎年スズケン本社に招き、研修会を実施
  • ※6
    EPS益新株式会社:日本と中国をつなぐヘルスケア領域の専門商社を目指し、CRO・医薬品製造・画像診断機器販売代理など、多様な事業を展開

韓国におけるヘルスケア製品全国流通網の構築

韓国においても医療費は増加傾向にあり、今後もヘルスケア産業の先進化および医療費抑制政策が政府主導の下で展開されていくと予測されています。

当社は2016年6月に株式会社ポクサンナイス※7に45%出資し、資本業務提携を行いました。当社グループが日本で培った健康創造領域における知見を生かし、ポクサンナイスの韓国医薬品流通事業の全国展開、医療関連事業の共同研究・開発を推進しています。また、物流機能や経営基盤の強化に向けた共同プロジェクトを通して、ポクサンナイスの企業価値向上を支援しています。

引き続き現地企業との協業を通じて、韓国医薬品流通事業および医療関連産業に貢献していきます。

(株)ポクサンナイスとの共同プロジェクト
  • ※7
    株式会社ポクサンナイス:釜山広域市とソウル首都圏を中心に医薬品流通事業を展開する韓国有数の企業

センコラとの既存サービスの拡大と新たなサービスの発掘

中国・韓国を中心に、アジアへの事業展開を目指し、協業企業である米国大手卸「センコラ(旧アメリソースバーゲン)」とのパートナーシップを深化させ、キュービックスシステムの展開の可能性を検討しています。また、当社グループがヘルステック企業への投資を目的に2022年に設立したCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)と、センコラのCVC「ABヘルスベンチャーズ」との協業により、世界のヘルスケア領域における新たなテクノロジーやソリューションの発掘、国内およびアジアへの導入検討を行っていきます。

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グループ会社

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