安心・安全かつ安定的な医薬品流通
安心・安全かつ安定的な医薬品流通
スズケングループの医薬品流通機能は、自然災害・パンデミックの発生や医薬品廃棄ロスの削減といった社会課題に対応する、社会インフラの使命を果たす機能であると考えています。医薬品卸売事業においては、トレーサビリティシステムにより、すべての医薬品の流通経路を明確化し、厳格な品質管理の下、必要な時に必要な医薬品を確実にお届けするネットワークを構築しています。また、薬事関連法令や医薬品情報提供に関して管理・監督を行う「薬事統轄部」を設置し、支店などの管理薬剤師を中心に医薬品医療機器等法、販売情報提供活動ガイドラインなどの遵守に取り組むとともに、GDP ガイドラインへの対応などの品質向上、グループ会社との連携によるコンプライアンス体制強化を図っています。
2017年からはキュービックスシステムの展開により、スペシャリティ医薬品のトレーサビリティを実現。2019年には、一般社団法人日本自動認識システム協会が選定する「第21回自動認識システム大賞※1」において優秀賞を受賞し、キュービックスの経済性、技術的工夫および利便性が評価されました。
今後は、デジタルソリューションなどを組み合わせることで、患者視点、サステナビリティの視点に考慮した仕組みを構築し、安定供給の実現と新たな価値提供を目指します。
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※1自動認識システム大賞:自動認識技術やシステムの発展と普及・啓発を目的として、先進的かつその効果が極めて顕著な自動認識関連の技術やシステムを表彰するもの
グローバル基準の品質管理
医薬品卸には、自然災害などの有事の際にも医薬品を安定供給するという社会インフラとしての使命があります。また、偽造医薬品の流入防止や医薬品の安全性を保持するための「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」への対応が求められています。
スズケングループは、2005 年より、メーカー物流と卸物流を一貫して担う医療流通プラットフォームを構築しています。メーカー物流で培ったグローバル基準の品質管理ノウハウを卸物流にも移植することで高い流通品質を確保し、全国物流ネットワークとしての機能を強化しています。また、これらの物流基盤によって、災害時などにおいても安定供給を果たす強靭なBCP体制を構築しています。
2024年に稼働を開始した業界初の複合型物流センターである首都圏物流センターや、将来的に中部圏・近畿圏に構築を計画している新たな自動化物流センターによって、より効果・効率的な物流体制を整備し、全国でのよりいっそうの医薬品の安定供給と、社会コストの低減に貢献していきます。
物流事業を担う株式会社エス・ディ・ロジでは、2008年に「ISO9001」の認証を取得し、メーカー物流においてGMP※2を考慮した品質管理を行ってきました。その後、「2015年版」を取得し、グローバル基準であるPIC/S※3 GDP※4に準拠した品質管理を実現。現在は、これまでに培ったノウハウを卸物流センターと事業所に展開し、一気通貫の品質管理強化に取り組んでいます。
「ISO9001:2015」の認証範囲
- エス・ディ・ロジ 信頼性保証室
- メーカー物流部 東日本ブロック 古河物流センター、杉戸物流センター、東日本物流センター、筑波物流センター
- メーカー物流部 西日本ブロック 神戸物流センター、尼崎物流センター、西日本物流センター、六甲物流センター
- ロジスティクス推進部 東北ブロック宮城物流センター
- ロジスティクス推進部 近畿圏ブロック大阪事業所
- 中央運輸 本社、岩槻営業所
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※2GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造における製造管理と品質管理基準
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※3PIC/S(医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム):各国政府や査察機関の間のGMPとGDPにおける二つの協力機関の統合呼称
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※4GDP(Good Distribution Practice):医薬品の輸配送・保管過程における品質管理基準
BCPへの対応
メーカー物流と卸物流の連携による、東名阪を基盤とした強靭な物流ネットワークを構築しています。自然災害などの発生時には、行政や製薬企業と連携して災害拠点病院などの医療機関に必要とされる医薬品を速やかに届ける体制を整備しています。また、災害による物流機能の低下・停止を想定した、複数の物流センターによるバックアップ体制も整備しています。物流拠点に集められた医薬品等は、他社所有権の製品も含め、当社グループが所有する運送事業用車両で医療機関や他の医薬品卸に輸送することが可能です。
2024年4月には防災設備を完備した首都圏物流センターを構築しました。同様の機能を持つセンターを中部・関西に展開することも検討しており、さらなる全国BCP 基盤の強化を目指しています。加えて、災害時や緊急薬の輸送時にも、GDP 品質の安定供給を目指し、飛行機や新幹線、船を利用した新たな輸送網の構築も進めています。
主なBCP対策
| 全国の輸配送ネットワーク |
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| 基幹システムの二重化 |
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| 自家発電設備の設置 |
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| 免震装置の導入 |
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| 輸送用燃料の備蓄 |
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| 衛星電話・優先電話の設置 |
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| 安否確認システムの導入 |
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| 自治体との災害協定 |
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| 緊急配送設備 |
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| GDP基準の新たな輸送網の構築 |
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大規模災害時等における「BCP手順書」を策定
東日本大震災での教訓および日本医薬品卸業連合会(卸連)の「災害対策マニュアル作成ガイドライン」に基づき「BCP手順書」を策定しています。
- 安全確保の見直し
- 状況把握の明確化
- 災害対策本部の役割を明確化
- 重要業務の明確化(重要業務対応手順書)
情報セキュリティの強化
当社グループでは情報資産を適切に保護し、リスクに対応するため、「情報セキュリティポリシー」を定め、定期的に見直しています。また、情報システムおよびネットワークの適切な運用管理、開発、利用に関する情報セキュリティ対策を体系的に定めるとともに、定期的な教育によって社員の意識向上に努め、グループ全体のセキュリティレベルの向上に取り組んでいます。
情報セキュリティ組織は、リスク・コンプライアンス部を中心に、取締役会、情報セキュリティ責任者、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会などから構成され、情報資産を誤用または悪用から保護するとともに、損失を最小限にするため、サイバーセキュリティを含む情報セキュリティの強化を図っています。
また、強化の一環として、2025年4月1日に取締役会の下部機構である「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」傘下の実務委員会として、「情報セキュリティ実務委員会」を設置しました。委員は各本部の企画部門長が務め、グループ会社の事業特性を踏まえた統制および施策の推進を担当しています。今後、当社グループにおける一元的なセキュリティ水準の把握・統制と強化をいっそう推進していきます。
地方自治体、陸上自衛隊との連携協定
東日本大震災での教訓から、2014年12月15日に自衛隊と協定を締結しました。
協定を締結する事により、緊急時連絡先を明確化できることによって、災害派遣に伴う医薬品等調達に関する品目・数量、納品場所などの迅速な調整・調達が可能となります。
医薬品卸売事業のグループ各社では、各地方自治体と2025年3月現在で108件の連携協定を締結し、地域住民の健康、高齢者の見守り、地域包括ケアシステムなどの支援に取り組んでいます。各協定の締結をきっかけに、さらなる関係構築から顧客の拡大、利益の獲得へと活動を広げていきます。
また、多職種連携においては、医療機関・保険薬局との関係性を生かし、地域の医療・介護に携わる人々をつなぐ役割を担っています。
新居浜市や今治市、琴平町、善通寺市にて「災害時におけるストーマ用装具の供給および保管等に関する協定」を締結
スズケングループとして四国4県の医薬品卸売事業を担うアスティスは、2025年9月、新居浜市と今治市の各市役所にて「災害時におけるストーマ用装具の供給および保管等に関する協定」を締結しました。本協定は、発災後、オストメイトの方たちが安心して避難生活を送れるようストーマ用具を安定に供給する体制を整えることを目的としています。また、各市からの要請に応じる情報連携においても、従来の連絡方法に加えてメディカルケアステーション(MCS)を使用することも記載されています。2024年は5月に香川県琴平町、9月に香川県善通寺市にも同じ協定を締結しています。
栃木県における災害時孤立地域を想定したドローン活用による医薬品配送の実証実験に参画
スズケングループとして栃木県の医薬品卸売事業を担うナカノ薬品は、2024年12月、栃木県における災害時孤立地域を想定したドローン活用による医薬品配送の実証実験に参画しました。
今回の実証実験を踏まえ、患者さまに医薬品が迅速にお届けできる体制を整え、災害対応に加え地域医療へのさらなる貢献を目指していきたいと考えています。