トップメッセージ
株式会社スズケン
代表取締役社長
適正な利益を確保し、社会インフラとして持続可能な体制に
スズケングループは、創立100周年に向け、健康創造領域においてさまざまな価値を創出する「健康創造事業体の実現」を目指しています。
厳しい事業環境が続く中にあっても、医薬品流通という社会インフラとしての機能を維持するために成長を続けなければなりません。そこで、医薬品卸を中心とした「既存事業の変革」と、デジタルの活用などを通じた「新たな成長事業の準備」に、両利きで取り組んでいます。この方針は、私が社長に就任した2022年度から掲げてきたものであり、マトリックス図を用いて社内外に説明し、実践しています。
まず、医薬品卸としてやらなければならないのが、流通改善への対応と、利益重視の営業改革です。流通改善においては、個々の医療用医薬品の価値に見合った価格交渉を徹底し、適正な利益の確保に努めています。社員の意識改革や、受注から納品までのプロセス改革など、コスト構造の改革に取り組んだことで営業利益率が改善するなど、利益重視の考え方が確実に定着していると感じています。しかしながら、今後は物価上昇や社員の待遇改善などにより販管費の増加は避けられません。こうした状況の中でも、将来に向けた投資を継続していくためには、売上総利益率を維持しながら売上高を伸ばしていく必要があります。
単に売上高を追うのではなく、売上総利益とコストのバランスを重視し、より効果的・効率的な営業体制への変革と、付加価値の提供による新たな収益の獲得が急務だと考えています。効果的・効率的な営業体制の構築に向けては、従来のMS(医薬品卸の営業担当者)によるリアルでの顧客接点に加え、デジタルの活用による接点の拡大を進めています。リアルの接点をデジタルで支援・効率化するバックヤード機能を強化するなど、顧客接点の拡充と質的向上を目指しています。最終的には、日々の業務で蓄積される情報と、当社グループが展開するコラボポータルやキュービックスシステムをはじめとするデジタルツールから得られる情報を統合し、製薬企業などに提供することで、新たな収益源となる機能フィーにもつなげていきたいと考えています。
加えて、医薬品流通における既存事業の強化として、アジア事業の展開にも注力しています。韓国においては、現地のパートナー企業である株式会社ポクサンナイスと共に事業を展開し、医薬品流通基盤の強化を進める中、2025年5月には、新たに韓国のドンウォン薬品グループとの業務提携を締結しました。これまでの経験から、私たちが日本で培ってきた機能やノウハウが韓国の医薬品流通でもお役に立てることを実感しており、韓国医薬品関連産業のさらなる発展に貢献していきたいと考えています。
情報活用による付加価値の創出と社会コストの低減
医薬品流通の基盤強化に向けては、2024年4月に稼働を開始した「首都圏物流センター」に続き、中部エリア全域をカバーする新たな自動化物流センターを愛知県春日井市に構築を予定しています。今後、近畿圏にも同様の物流センターを構築する予定で、東名阪のBCP対応の強化や、よりいっそう安定した医薬品供給を実現することで、地域医療のさらなる発展に貢献するとともに、新たな雇用の創出によって地域社会の活性化に貢献していきます。
加えて、スマートロジスティクスへの進化にも取り組んでいます。スマートロジスティクスでは、流通にデジタルを掛け合わせ、そこから得られる情報を活用することで、収益性の向上と社会課題解決の両立を目指しています。その中核を担うスペシャリティ医薬品のトレーサビリティシステム「キュービックスシステム」は、2017年から展開し、現在では日本の大学病院、がん拠点病院を中心に、500軒以上の医療機関に導入されています。さらに、2024年には在宅患者に対する遠隔の服薬管理を可能にする「キュービックスDT」を開発し、がん研究会有明病院さまとの共同研究を開始するなど、より高度な機能開発も進めています。こうした取り組みにより、2024年度も約57億円の医薬品廃棄ロス削減を実現することができました。
このキュービックスシステムによって得られる医薬品の流通・管理・使用状況のデータに加え、メーカー物流、全国の輸配送網、卸物流、納品予定・発注提案アプリなどから得られるお得意さまの在庫情報を連携することで、流通在庫の可視化をいっそう推進します。これにより、さらなる配送の効率化や在庫の偏在解消、医薬品廃棄ロスの削減など、医薬品物流における社会課題の解決に貢献していきます。
当社グループには、メーカー物流から卸物流、患者さままでのラストワンマイルをカバーする全国の物流機能があります。メーカー物流への参入から20年を迎えた今、その機能をさらに強化し、協業企業のさまざまな機能と組み合わせた物流の総合提案や物流受託事業を展開することで、より大きな価値を提供できる企業体への進化を目指します。
医療・介護従事者「個」とのつながりを生かした情報ビジネス
そして、現在、特に力を入れて進めているのが、新領域であるデジタルヘルスケアへの取り組みです。「見える、つなぐ、変える」という方針の下、デジタルの活用によって把握できていなかった情報を可視化し、情報連携によって人やモノをつなぎ、社会や業界の課題、現状をより良い方向へ変えていくことを目指してきました。その中心となる医療DX総合プラットフォーム「コラボポータル」は、41万人以上の医療・介護従事者とのつながりを築いています。これについては、他社にはない、大変価値ある情報基盤を構築できたと自負しています。
従来構築してきた、全国約16万軒の病院や保険薬局といった「施設」とのネットワークという当社グループの「伝統資産」に加え、41万人以上の「個」とのつながりを獲得したことで、医療・介護従事者への患者さまや介護サービス利用者のケアにつながる情報・資材の提供のみならず、メーカーに対する、医療・介護従事者向けの多様なマーケティング支援が可能となりました。すでに、コラボポータルを通じて、医療・介護従事者の属性に応じたセミナーやデジタル展示会など、40以上の企画を実施・検討しています。製薬企業だけでなく、ヘルスケア領域に関心を持つ多くの企業から、当社グループと新たな取り組みに挑戦したいという声をいただいています。
一方で、情報の整理・活用には依然として課題があります。せっかく収集した情報を効果的に活用するため、これまでに取得してきた情報とこれから取得していく情報を一元管理できる「グループ情報統合基盤」の構築を生成AIも活用しながらグループ横断で進めています。まずは医療・介護従事者とのつながりをしっかりと築き、次に日々の業務の中で得られる情報を確実に整理する。そして、その精度を高め続ける。この3点を徹底することで、当社グループならではの新しい情報ビジネスを創出できると確信しています。
受け継がれるDNAと挑戦を大切に
成長戦略において重要な2025年度ですが、日本においては阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件という衝撃的な出来事から30年という節目の年にあたります。地下鉄サリン事件発生時、当社のMSは本社のある名古屋から各地の支店の在庫をかき集めながら新幹線で東京へ向かい、230人分の解毒薬をいち早く医療機関へ届けました。この行動は、2025年3月に放映されたテレビ番組でも取り上げられ、当社が果たした役割を改めて広く知っていただく機会となりました。また、地震をはじめとする自然災害が発生した際には、各地の社員が自ら判断し、現場で地域医療を支える行動を取ってきました。その姿勢からは、お得意さまに確実に医薬品を届けるという使命感、そして当社グループに脈々と受け継がれている「社会に貢献するDNA」がはっきりと感じられます。こうした一人一人の行動の積み重ねによって、当社グループは日本の医療に欠かせない存在になったのだと思います。
私の経営者としての最大の使命は「人づくり」であると考えています。当社グループにはやりたいと手を挙げた人にチャンスを与える文化が根付いており、私自身、38歳でメーカー物流事業を立ち上げ、社長を任せてもらうなど、たくさんの挑戦の機会をもらえたように、次の世代にも自らが描いた夢や目標に向かって挑戦し、仕事を通じて自己実現を果たしてほしいと思っています。挑戦には時間とスキルが求められますが、当社グループの社員はリスキリングやグループ提案制度「チエノワ」への提案などにおいて積極的に努力を重ねてくれています。数年後に、若い社員が自ら挑戦し、活気あふれるグループへと成長していることを心から楽しみにしています。
「機能総体」の発想で社会課題の解決に貢献
当社グループは、医薬品の卸売だけでなく、医薬品・医療機器・材料の製造や薬局、介護など、ヘルスケア領域において幅広く事業を展開してきました。
そして、当社グループには約50社のグループ会社と、約13,000名のグループ社員が在籍しており、さらには数多くの企業と提携をしています。これらの人や組織が連携し、一つのチームになる「One Team」の考え方を大切にしています。そうした状況の中で、私が思い描く将来の姿は、変革を進める中でグループ内に蓄積してきた機能を分解して組み合わせ、製薬企業や医療・介護従事者、地域社会が抱える課題に対して最適な機能を新たに提供する、「機能総体」によって社会課題の解決に貢献していく企業です。
2026年度から開始する中期経営計画は、健康創造事業体の実現に向けた成長のフェーズになると考えています。
他社には真似できない機能総体による新たなビジネスによって、社会のさまざまなニーズに応え、課題解決に貢献していく。こうしてできた新たな機能は、まさに「お得意さまに学ぶ」という当社グループに根付く経営の考え方から生まれる宝になると確信しています。スズケングループがつくり上げる新しい世界観にどうぞご期待ください。