トップ対談

左 :株式会社スズケン代表取締役社長 : 浅野 茂  中央 : 株式会社スズケン取締役最高顧問 : 別所 芳樹  右 : 株式会社スズケン代表取締役会長 : 宮田 浩美

スズケンは、2022年11月に創立90周年を迎えました。100周年に向かうこれからの時代を「第3の創業期」と位置付け、健康創造事業体という新たな姿の実現に向けて、取り組みを加速させています。

スズケン最高顧問の別所、代表取締役会長の宮田、代表取締役社長の浅野の3名がスズケングループの目指す「健康創造事業体」としての姿や事業戦略について語ります。

「伝統資産」としてのお得意さまとの強い信頼関係

別所:スズケンは創立以来、「世のため、人のため」「世の中のお役に立つ」という“創業のこころ”を大切に受け継ぎ、その“創業のこころ”を社員全員が行動に移せるようにとの思いを込め、「お得意さまに学ぶ」という言葉に託してきました。

スズケンは医薬品の卸売を創業し、その後、「人々のお役に立ちたい」という思いを受け継ぎつつ、事業領域を「健康創造」と定め、医薬品製造や医薬品メーカー支援、保険薬局や介護まで事業を拡大してきました。今やわれわれのお得意さまは、医療機関や保険薬局、製薬企業のみならず、医療・介護に従事される方々、患者さまやご家族の皆さま、利用者さま、さらには、生活者の皆さまや地域社会に広がっており、「健康創造」という領域で新しい価値を創造し、社会に提供することが、スズケングループの果たす使命だと考えています。

最高顧問 別所 芳樹

宮田:“創業のこころ”は、まさにわれわれスズケングループの原点であり、社員全員が共有しているものです。「人々のお役に立ちたい」という純粋な思い、その思いが私たちの行動に結びつく原動力になっています。

これまでもさまざまな自然災害や有事の際に社会的使命を果たすべく懸命に仕事にあたる社員の姿を目の当たりにしてきました。

例えば、1995年3月に発生した地下鉄サリン事件では、サリンの解毒剤である「パム」を名古屋から新幹線こだまに乗りこみ、各停車駅で支店の在庫を受け取り、注文から数時間で聖路加国際病院さまにお届けしました。また、2011年の東日本大震災では、未曽有の大災害の中にありながら、医薬品の供給を途絶えさせないよう被災した社員も自らの家の片づけを後回しに、お得意さまへの医薬品供給に奔走する社員の姿がありました。

社員の使命感・責任感のある行動はスズケングループのDNAが継承されている証だと思っています。

スズケングループの強みは、医療機関や保険薬局などのお得意さまと築き上げてきた過去からのネットワーク、それを生かした「繋げる力」と「広げる力」であり、それがスズケングループの「存在意義=パーパス」でもあります。

浅野:お得意さまとの信頼関係は、大変な価値があり、スズケングループが何よりも大切にすべき重要な「伝統資産」だと考えています。いくら素晴らしいビジネスモデルやサービスであっても、この「伝統資産」の力なくしては、普及できません。

お得意さまと長きにわたり築いてきた関係性という強みを生かして、100周年に向けて、これからも患者・生活者の皆さまの視点に立ったさまざまなヘルスケアソリューションを提供する健康創造企業として社会に貢献していきたいと考えています。

スズケングループが目指す「健康創造事業体」の姿とは

代表取締役会長 宮田 浩美

宮田:当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。医薬品流通という社会インフラとしての機能を維持しつつ、さらなる成長と社会の持続的な発展を目指すには、大きな発想の転換を伴う変革が必要です。そのためにはオープンイノベーションの考え方で、事業間の連携や協業企業との機能融合により、新たな機能を持つ製品やサービスを拡充し、提供価値を拡大することが重要だと考えています。

浅野:国内外のさまざまな企業の動きを見ていると、異業種によるヘルスケア市場への動きは大変早いと感じており、私たちが想像している以上のスピードでその変化は起きています。このような流れに、私たちは追随をしていかなくてはいけないですし、そのためには、大変厳しい言い方にはなりますが、スズケンやグループの今までの事業の考え方、事業のモデル自体を一新するほどの「変革」「改革」をしていかなくてはいけないと私は強く思っています。それを言葉で表したのが、別所が表明した「第3の創業」「コア事業である医薬品卸売事業から健康創造事業体への転換」であり、その思いと共に、私たちがバトンを託されたと思っています。

別所:高齢化社会を迎えて、あるいは、若い人も含めて、人々の健康への意識というのは、ますます高まりを見せています。狭い側面で医薬品だけで捉えるとなかなか先が見えないということになりますが、健康という大きな視点で捉えると、大変大きな可能性があると言えます。薬という枠を飛び越えた健康へのアプローチは、DXによって加速し、そのアプローチの仕方も変わってくる、さらには、企業のあり方そのものも、DXによって新しい展望が開けてくる、そういう面から見ると、われわれには前途洋洋たる未来があると思っています。

浅野:健康創造事業体とはどのような姿なのか、私は、患者さまの「健康創造」に貢献するスズケングループの姿だと考えています。患者さまを起点にして、患者さまのライフサイクルに合わせ、トータルで「健康創造」を実現する、このようなグループになっていきたいと考えています。

健康創造事業体の姿
スズケングループの創業100周年(2032年)の姿 我々スズケングループは未病~治療~予後まで、患者さまの「健康創造」のすべてに貢献する健康創造事業体になります。 患者様のヘルスケアライフサイクルから未病・健康維持から診断から治療から予後。

「健康創造事業体」を具現化するためのグループ経営

浅野:健康創造事業体に向けて、私はスズケングループの新しい経営の考え方を「One Team」としました。各部門やグループ各社の社員がチームとなり、さらに提携・協業している企業の皆さんともチームが生まれる、このようなチームが能動的かつ迅速に動く。そして、グループ経営の軸となるのが「スズケングループDX」です。データやデジタル技術を活用してスズケングループの事業・社員、またメーカーさま、医療機関・保険薬局、医療・介護従事者の皆さま、患者さま、地域が繋がる。これによって、組織、人、企業文化、さらにはコア事業である卸事業モデルもダイナミックに変えていきたいと考えています。リアルな社員である「人」と「デジタル」が融合する新しい世界をスズケングループ全社員で一緒に創り上げていきたいと思っています。

代表取締役社長 浅野 茂

「健康創造事業体」における事業戦略とは~事業総体から機能総体へ~

浅野:健康創造事業体への転換に必要なことは、「現事業の構造改革」と「新領域へのチャレンジ」に両利きで取り組み、「機能総体」をコンセプトに、各事業が持つ機能をパズルのように分解し、組み合わせて、協業企業とともに、全く新しい価値を創出していくことです。現在「機能総体」の発想から、新規事業の3つの成長ドライバーとして、「スマートロジスティクス」「デジタルヘルスケア」「地域医療介護支援」を掲げています。これらの取り組みにより、地域医療における高齢者施設や在宅患者さまへの新たなソリューション開発、両社が有するサービスや機能を組み合わせた製薬企業さまへの新たな支援提案など、ヘルスケア領域における新たな事業領域の拡大、社会のお役に立てる価値創造の可能性を見出していきたいと考えています。

また、これらの取り組みの根底には、私たちはヘルスケアエコシステムの一翼を担っているという重要な社会的使命があること、加えて、ヘルスケアにおけるさまざまな社会課題と社会的コストへ対応することが大切な役割であると考えています。例えば、スマートロジスティクスへの取り組みも、メーカー物流、全国への輸送ネットワーク、卸物流、お得意さまへの配送ネットワークという全国をカバーする医薬品の物流インフラがすでに整備されているからこそ、流通在庫をリアルタイムに可視化することでサプライチェーン全体における流通在庫の最適化、廃棄ロスの削減、共同化による配送効率の向上、さらに環境への対応など、社会的コストの低減および社会課題に貢献できると考えています。

全員経営「チエノワ」構築、第3の創業に向けた人財開発

浅野:「健康創造事業体への転換」を加速させるグループ一体施策として、グループ全員による提案制度「チエノワ」という取り組みをスタートさせています。グループ全社員の知恵を結集させ、社員の声を経営に生かす、このような取り組みによってスズケングループの文化の醸成に繋げていきたいと考えています。

そして、何より必要なのは、新しい時代を担う人材であると考えており、全グループ社員を対象にチャンスを与えるプログラムを導入するなど、さまざまな成長機会を提供しながら、新しい時代を担う人材を発掘・育成していきます。また、過去から蓄積された経験やノウハウ、また「伝統資産」である、お得意さまとの繋がりを生かすため、より長く活躍できるような環境整備にも取り組んでいきます。

最後に、健康創造事業体という新しい姿で期待することは

別所:環境の変化は、絶えずチャンスです。このような厳しい時代状況を向かい風と捉えるか、追い風と捉えるか。歯向かえば抵抗を受けるけれども、流れに乗れば遠くに飛べる、われわれスズケングループは、医薬品卸やMSという固定概念に自らを縛りつけてしまわないようにしなくてはならないと考えています。すでに単なる医薬品卸ではなく、日本の医療にとってなくてはならない企業、人々の健康を守るために不可欠な存在です。スズケングループは新たな企業グループとして着実に歩みを進めていると思います。

宮田:事業環境は激しく変化しており、新型コロナの影響やデジタル化によって、そのスピードはさらに上がりました。スズケングループは、第3の創業の姿である「健康創造事業体の実現」という新たなステージを迎えます。「健康創造」の領域には無限の可能性があり、スズケングループが社会に提供できる価値、社会に貢献できる余地はこれからもまた無限であると思っています。次のステージに向けて、環境が変わっても先人から受け継いだ理念や精神を大切にしながら、企業価値を向上させていくことが重要だと考えています。

浅野:スズケンは、10年後に、100周年を迎えます。スズケングループの社員と一緒になって、10年後はもっと社会に貢献できる企業グループにしたいと思います。

「お得意さまに学ぶ」という“創業のこころ”を大事に受け継ぎながら、現場の意見で本社を動かす、そして、皆さんと新しい仕組みを作っていく。情報をうまく活用して、お得意さまに満足いただける、新しいサービスをどんどん提供していきたいと考えています。

大変厳しい時代だからこそ、勇気を持って一歩前に進みたい。スズケングループの社員がこの企業グループに入って本当に良かったと思い、生き生きと働ける、そんな会社づくりを私は社長として目指したい。スズケングループの総力を結集し「One Team」となって、新しい世界「健康創造事業体」の姿を創り上げていきます。