医薬品卸売事業
社会インフラとしての高い流通品質による医薬品の安定供給を実現するとともに、「医療流通プラットフォーム」の構築により、流通在庫の適正化を図り、社会コストの低減に貢献しています。
機会とリスク
機会
- スペシャリティ医薬品の市場拡大
- 後発医薬品の使用拡大
- 医療・介護分野におけるデジタル技術の普及
- デジタルヘルスサービスの増加
- 地域医療連携・地域包括ケアシステムの推進
リスク
- 国民医療費の増大抑制による市場成長の停滞
- 医薬品流通、販売活動の変化(流通改善ガイドラインへの対応)
- 流通在庫管理の高度化(在庫偏在、医薬品廃棄ロス)
- 物流2024年問題
- 異業種の参入による競争激化
- 偽造医薬品の流通
- 自然災害、パンデミックの発生
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※流通改善ガイドライン:医薬品流通における課題である「未妥結・仮納入の改善」「単品単価取引の推進」「一次売差マイナスの解消」に対し、流通改善の取り組みを加速させるために厚生労働省が2018年1月に作成した、流通関係者が遵守すべきガイドライン。(2021年11月、2024年3月に改訂)
スズケングループの強み
安心・安全かつ安定的な医薬品流通体制
- 全国の営業・物流ネットワークとグローバル基準の流通品質
- 東名阪を基点とした全国BCPネットワーク
- グループ卸全社の営業・物流システムの統一
- GDPスペシャリストの育成・配置
効果・効率的な営業・物流体制
- 営業のバックヤード機能の拡充(営業サポート配置拠点 約50カ所)
- ロボット技術やAI活用による自動化・省人化
- デジタルを活用した新たな流通モデル「キュービックスシステム」
顧客との強固な関係
- 医療機関、保険薬局、医療従事者とのネットワーク
- DX人材の育成・配置
- 安定した医療用医薬品市場のシェア(薬価ベース):21.5%
医薬品卸売事業における営業・物流拠点・車両台数(2025年3月31日現在)
- 営業拠点:201拠点
- 卸物流センター:15カ所
- 運送事業用車両:2,500台
- 「ISO9001:2015」認証拠点:宮城物流センター、大阪事業所
主な取り組み
医薬品卸売事業
安心・安全かつ安定的な医薬品流通
スズケングループは国内外約1,000社の医薬品メーカー・医療機器メーカー等から医療用医薬品・診断薬、医療機器・医療材料、医療食品を仕入れ、全国の医療機関および保険薬局に供給しています。
必要な時に、必要な量の医薬品を確実に供給
厳格な品質管理のもと、医薬品を全国くまなく、必要な時に、必要な量を、確実にお届けするネットワークを構築しています。また、全国対応のトレーサビリティ・システムによって、ロット番号と有効期限を一元管理し、すべての医薬品の流通経路を明確化。医薬品回収の発生時には、速やかな対応が可能です。
非常時にもお役に立てる安定供給体制
スズケングループは、全国をカバーする物流センターをはじめとする物流拠点に豊富な在庫を有し、欠品のない物流体制を整えています。地震などの大規模災害やパンデミックといった非常時に備えて、日頃から安定供給体制の整備に取り組んでいます。
医療流通プラットフォームの進化
日本一のメディカル・ロジスティクスパートナーを目指して ~Only One 医療流通プラットフォーム~
スズケングループは医薬品メーカーから医薬品卸までの物流を担う「メーカー物流」と、医薬品卸から医療機関・保険薬局までの物流を担う「卸物流」の2つの機能を強化してきました。さらに、厳格な温度管理が求められる治験薬物流や希少疾病用医薬品流通も含め、高品質で幅広い機能を備えた業界無二の医療流通プラットフォームを構築しています。医薬品メーカーのサプライチェーンにおけるアウトソーシングニーズに応えるだけでなく、物流の共同化により、配送の効率化や流通在庫の適正化を図り、社会コストの低減にも貢献しています。
2012年には医薬品卸として初めて希少疾病領域の総合支援事業を開始。医療流通プラットフォームを活用し、既存の流通システムでは対応できなかったニーズにも柔軟に対応することで、希少疾病薬の安定供給を実現しています。
品質面においては「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」に対応し、卸物流拠点での ISO9001 の「2015 年度版」の取得や社内資格である「GDP スペシャリスト」の育成など、人とシステムの融合によるGDP 対応を強化しています。
当社グループでは、現在、メーカー物流においては、エス・ディ・ロジの古河、杉戸、東日本、筑波、神戸、尼崎、西日本、六甲の各メーカー物流センターおよび信頼性保証室、メーカー物流部、中央運輸の岩槻営業所および本社の 12 拠点、卸物流においては、スズケンの宮城物流センターと大阪事業所および、エス・ディ・ロジのロジスティクス推進部の3拠点の計15拠点で「ISO9001:2015」を取得し、国際基準である PIC/S※1GDP※2 に準拠した高度な品質管理体制を整備しています。現在、上記に加え、卸物流 12 拠点での「ISO9001:2015」認証取得を進めており、引き続き、グループ全社を挙げて品質管理強化に取り組み、医薬品流通の社会的使命を果たしてまいります。
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※1PIC/S(医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム):各国政府や査察機関の間のGMPとGDPにおける二つの協力機関の統合呼称
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※2GDP(Good Distribution Practice):医薬品の輸配送・保管過程における品質管理基準
製品カテゴリーの変化に対応した新たな流通モデル
スペシャリティ医薬品流通
2017年から、スペシャリティ医薬品のトレーサビリティシステム「キュービックスシステム」を展開しています。ICタグを通じてデータを読み書きするRFIDとIoT技術搭載の専用保管庫を使用し、医薬品の輸送から院内保管、戻り品の返却、再納品に至るまで、24時間365日、リアルタイムで医薬品の管理状態を遠隔モニタリングすることができます。これにより、再販売の可否判断や在庫状況の把握が可能となり、医薬品廃棄ロスの削減や在庫偏在の防止に貢献しています。また、自動発注や不動品・未使用在庫の入れ替え提案などを自動化でき、医療機関の業務負荷軽減にもつながっています。
地域医療連携・地域包括ケアシステムへの対応
当社グループの保険薬局や介護事業、ITヘルスケア企業との連携により、地域の医療・介護に関わる人々をつなぎ、課題解決に取り組んでいます。これまでに多くの地方自治体と支店・営業部・会社単位で連携協定を締結し、地域社会への貢献を進めています。
ヘルスケア流通改革
流通改善と生産性向上への取り組み
社会インフラ機能の維持に必要な適正利益の確保を目指し、ヘルスケア流通改革を進めています。その中で、流通改善ガイドラインを遵守するとともに、利益重視の経営に向けた社員の意識改革を含むコスト構造改革などに取り組んでいます。また、リアルとデジタルを組み合わせた営業体制の整備として、「コラボポータル」や「納品予定お知らせサービス・納品予定アプリ」「発注提案アプリ」の普及、バックヤード機能の拡充を進め、MSが担うリアルな顧客接点の最大化と、生産性向上を図っています。
リアルとデジタルを組み合わせ顧客接点を拡大
従来の医薬品卸は、受注から納品、返品にあたって、常に営業担当であるMSの判断・確認が必要な、MSに依存した体制となっていました。健康創造事業体への転換に伴いMSの重要性が増すことを踏まえ、ヘルスケア流通改革を行い、効果的・効率的な営業体制を構築することで「医薬品卸」から「ヘルスケア流通」への転換を図ります。具体的には、MSの間接業務を代行するサポート体制の構築とコラボポータルのサービスを活用した「営業サポート機能」、在庫情報や納品予定を見える化したアプリの活用およびカスタマーセンターの構築による「カスタマー機能」、グループ会社である株式会社エス・ディ・ロジとの連携による「ロジスティクス機能」の3つのバックヤード機能を強化します。これにより、MSが本来の役割である、スズケングループとお得意さまをつなぎ、健康創造の輪を広げ、収益を生み出すことに集中できる環境を整えます。
営業活動については、訪問を軸とした対面営業でお得意さまとの信頼関係を構築するというこれまでの手法を大切にしながらも、コラボポータルの活用による情報提供やソリューション提案といったデジタル接点も拡大させていきます。訪問量を維持しながら、効率も重視して顧客接点量の最大化を図ります。
営業・物流・デジタルの機能を融合し、新たな医薬品卸売事業の姿を目指す
社会インフラである医薬品流通を維持しつつ、社会課題の解決に貢献していくためには、強固な基盤構築と、収益につながる新たな価値の創出が不可欠であると考えています。
医薬品卸の基幹機能である、営業、物流、バックヤードにおいては、コラボポータルや受注納品・発注提案のアプリなどのデジタルツールの活用による受注から納品までの業務の自動化や、お得意さまからのお問い合わせ対応や情報提供などを担う営業サポート体制の集約化など、デジタルの活用による機能強化を進めています。これらによりMSの業務を効率化し、MSがリアルの顧客接点強化に活動時間を充てられるようにします。リアルとデジタルを融合した多様な顧客接点を生かすことで、お得意さまへの新たな商材やサービスを提案する営業体制の実現につなげていきます。
新たな付加価値の創出に向けては、日々の営業活動やデジタルを活用した顧客接点から蓄積される情報と、キュービックスシステムなどのリアルタイムでの流通在庫の情報、コラボポータルをはじめとするデジタルツールから得られる情報を統合・分析する仕組みづくりに着手しています。この情報を付加価値として提供することで、機能フィーなどの新たな収益につなげていきます。
リアルのMSを核に、営業・物流・バックヤード・デジタル、それぞれの機能の充実と連携体制の確立により、生産性向上とお得意さま満足度の向上を同時に実現します。さらに、新たな付加価値による収益を獲得する、医薬品卸売事業の新しい姿を目指していきます。
協業による主なソリューション
- 医療DX総合プラットフォーム「コラボポータル」
- 医療介護向けデバイス端末提供サービス「コラボモバイル」
- スペシャリティ医薬品トレーサビリティシステム「キュービックスシステム」
- 薬局向け在庫管理システム「PS+マネジメント」
- 自動音声認識・電子薬歴管理システム「PS+Voice」
- 薬局向け物品・情報管理システム「メディフィームスPE」
- リモート・ディテールサービス「ESナビゲーション」
- デジタルサービス:医療介護専用コミュニケーションツール「メディカルケアステーション(MCS)」、医療機関向けコミュニケーションインフラ「Dr.JOY」、PHRプラットフォーム「Welbyマイカルテ」、医療機関向け問診サービス「ユビーAI問診」、IoT発注・在庫管理ソリューション「スマートマット」
- 処方薬配達サービス「ARUU」
アジア事業
中国・韓国における医薬品流通事業の展開
中国における医療プラットフォームの構築
アジアでは、人口増加や経済成長に伴い各国政府の医療制度改革が推進されています。医薬品流通の高度化・効率化も急がれており、当社グループには日本で培った経験、知見に大きな期待が寄せられています。
中でも中国は、所得水準の向上や医療保険制度の整備などを受けて、現在世界第2位の医薬品市場となっています。
当社は2008年に中国の大手医薬品卸である上薬控股有限公司との合弁会社「上海鈴謙滬中医薬有限公司(現:上薬鈴謙滬中(上海)医薬有限公司)」(当社持株比率49.9%)を設立し、上海と青島で医薬品流通事業を展開しています。
さらに2016年9月には、EPSグループのEPS益新株式会社※6に35%出資し、資本業務提携を行いました。両社で事業展開する「鈴謙(深圳)医薬有限公司」(当社持株比率20.0%)では、主に、日系製薬企業の製品の中国市場への導入支援や、中国全土における学術販促活動の受託を行っています。
これまでの事業活動の結果、当社はパートナー企業と共に、保有する研究・開発・治験・製造・販売・販促・流通・回収の機能を活用して、お客さまが必要とするサービスをワンストップで提供できる「医薬品流通プラットフォーム」を実現しています。今後も中国のヘルスケア領域における新たな付加価値の創出を目指していきます。
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※6EPS益新株式会社:日本と中国をつなぐヘルスケア領域の専門商社を目指し、CRO・医薬品製造・画像診断機器販売代理など、多様な事業を展開
韓国におけるヘルスケア製品全国流通網の構築
韓国においても医療費は増加傾向にあり、今後もヘルスケア産業の先進化および医療費抑制政策が政府主導の下で展開されていくと予測されています。
当社は2016年6月に株式会社ポクサンナイス※7に45%出資し、資本業務提携を行いました。当社グループが日本で培った健康創造領域における知見を生かし、ポクサンナイスの韓国医薬品流通事業の全国展開、医療関連事業の共同研究・開発を推進しています。また、物流機能や経営基盤の強化に向けた共同プロジェクトを通して、ポクサンナイスの企業価値向上を支援しています。
引き続き現地企業との協業を通じて、韓国医薬品流通事業および医療関連産業に貢献していきます。
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※7株式会社ポクサンナイス:釜山広域市とソウル首都圏を中心に医薬品流通事業を展開する韓国有数の企業
韓国医薬品産業のさらなる発展に向けた新たなネットワークの構築
2025年5月に、韓国で医薬品流通事業を展開するドンウォン薬品グループとの業務提携、および同グループの株式会社慶南ドンウォン薬品との資本業務提携を締結しました。ポクサンナイスとドンウォン薬品グループとの協業により、両社の仕入・物流機能の共有や、未進出地域である韓国南西部への展開などを進め、韓国全土にヘルスケア商材を届けるためのネットワークを構築していきます。
当社グループは、志を同じくする現地パートナー企業と一体となり社会課題解決に貢献する取り組みを進めることで、さらなる韓国医薬品関連産業の発展に貢献していきます。
センコラとの既存サービスの拡大と新たなサービスの発掘
中国・韓国を中心に、アジアへの事業展開を目指し、協業企業である米国大手卸「センコラ(旧アメリソースバーゲン)」とのパートナーシップを深化させ、キュービックスシステムの展開の可能性を検討しています。また、当社グループがヘルステック企業への投資を目的に2022年に設立したCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)と、センコラのCVC「ABヘルスベンチャーズ」との協業により、世界のヘルスケア領域における新たなテクノロジーやソリューションの発掘、国内およびアジアへの導入検討を行っていきます。
関連するグループ会社・関連会社
グループ会社
医薬品卸売事業
- 株式会社スズケン
- 株式会社サンキ
- 株式会社アスティス
- 株式会社翔薬
- 株式会社スズケン沖縄薬品
- ナカノ薬品株式会社
- 株式会社スズケン岩手
- 株式会社エス・ディ・ロジ
- クラウメド株式会社
- 株式会社ピーエスシー
- 有限会社サンキ・メディハート