スペシャリティ医薬品流通
「医療流通プラットフォーム」を基盤に、厳格な温度・在庫・セキュリティ管理が求められる「スペシャリティ医薬品」の流通において、スズケングループには業界トップの受託実績があります。
メーカー物流事業参入以降、サービスの高度化を進め、さらなる事業拡大に取り組むことで、医薬品流通の品質向上と社会コストの低減に貢献しています。

製薬企業のアウトソーシングニーズに応え、メーカー物流の受託を開始
当社グループは、2005年に医薬品卸として初めてメーカー物流の受託を開始しています。製薬企業のアウトソーシングニーズに応えるとともに、メーカー物流と卸物流を一貫して担うことで、製薬企業ごとに行われていた物流を集約することで、配送の効率化や流通在庫の適正化を図り、社会 コストの低減にも貢献しています。
また、当社グループは現在11のメーカー物流センターと6つの輸配送ターミナルを有しています。このうち8つの物流センターでは、2008年から、GMP※1に準拠した「ISO9001」の認証を取得。その後「2015年版」を取得したことで、グローバル基準となるPIC/S※2GDP※3に準拠し、新たな運用基準となる「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」にも対応するなど、品質管理の向上に努めてきました。卸物流においても、メーカー物流で培ったノウハウを移植し、高い流通品質を確保できる全国物流ネットワークを構築しています。
業界に先駆けてメーカー物流受託を開始したことで蓄積してきた、豊富な経験とノウハウを持つ人材こそがスペシャリティ医薬品流通における当社グループの最大の強みであるといえます。
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※1GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造における製造管理と品質管理基準
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※2PIC/S(医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム):各国政府や査察機関の間のGMPとGDPにおける二つの協力機関の統合呼称
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※3GDP(Good Distribution Practice):医薬品の輸配送・保管過程における品質管理基準
希少疾病と再生医療の分野にサービスを展開
2012年には、医薬品卸として初めて希少疾病領域の総合支援事業を開始しています。さらに2016年には、再生医療等製品の治験製品物流を開始。再生医療等製品は日本で採取された組織や細胞を海外に輸送し、加工・培養したのち日本に輸送するケースがあることから、2018年に米国医薬品卸「センコラ(旧アメリソースバーゲン)」のグループ会社であるワールド・クウリアーと協業し、再生医療等製品のグローバル流通プラットフォームを構築しました。
「キュービックスシステム」を展開し、品質を保つ温度管理とトータル・トレーサビリティを実現
2017年、卸物流から医療機関へのスペシャリティ医薬品の流通モデルとして導入を開始した「キュービックスシステム」は、さまざまな企業との協業により、IoTやRFID※4のデジタル技術を活用したトータル・トレーサビリティを実現しています。温度や衝撃、位置情報などを可視化し、24時間365日、リアルタイムで医薬品の管理状態をモニタリングできるため、再販売の可否判断や在庫調整が可能となり、医療機関・保険薬局における医薬品廃棄ロスの削減に大きく貢献しています。
キュービックスは保管容量や温度、機能によって病院版、薬局版、治験薬管理版、在宅版、大型版、室温版があり、全国の中核病院を中心に、約400の施設で採用されています。
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※4RFID(Radio Frequency IDentification):記憶された人やモノの個別情報を無線通信によって読み書きする自動認識システム

医薬品定温輸送ボックス「VIXELL」による患者の居宅への配送を開始
パナソニックと共同開発した医薬品定温輸送ボックス「VIXELL」を活用した患者の居宅までの「ラストワンマイル」の配送体制を整備し、製薬企業から患者宅までのトータル・トレーサビリティ流通モデルを構築しています。
VIXELL は、保冷ボックス、蓄熱ユニットにより、隙間からの冷気漏れを防ぐとともに、素材には真空断熱筐体を採用し、温度、位置情報、衝撃などをリアルタイムに監視することができます。
2022年には、VIXELL を活用した、血友病治療薬「バイクロット配合静注用」の居宅配送サービスを開始しています。医療機関での集荷および患者宅への配送は、協業するセイノーグループの処方薬即時配送サービス「ARUU」を展開するココネット社の医薬品輸配送専門の教育を受けた配送ドライバーが担当します。
日本に新規参入する海外製薬企業のニーズに対応

近年、日本市場への新規参入を目指す海外の医薬品企業は増加しつつあるものの、工場や物流センター、流通ネットワークを持たないケースが多い状況にあります。
当社グループは2021年4月に武州製薬株式会社と協業を開始し、2024年4月に稼働した「首都圏物流センター」には、卸物流エリアに加え、製造業務受託・メーカー物流エリアも併設しています。製造業務受託エリア内には武州製薬の「草加パッケージングセンター」を設置し、センター内で医薬品の検査・表示・包装を中心とした受託製造と保管が可能となります。製造から卸物流まで一拠点で対応できるため、製品移動の最小化によるリードタイムの短縮、輸配送コストや環境負荷の低減を実現しました。
2024年5月には、武州製薬およびEPSホールディングスとの協業により、日本のドラッグロス解消に貢献する新たなビジネスモデル「J-ENTRY Consortium」を構築し、スペシャリティ医薬品の開発から製造販売承認申請、製造、販売、物流などに至るまで、海外製薬企業の日本市場参入をワンストップで支援可能となりました。このビジネスモデルは、日本で上市するために必要な開発費用などは上市後に回収する成功報酬型であり、製薬企業はリスクを取ることなく参入が可能です。日本独自の規制への対応や日本に製造工場や物流センター、流通ネットワークを保持していないといった課題を解消し、参入企業を増加させることで、日本における治療の選択肢拡大に貢献していきます。